■診療
■経過
主文
1 当庁平成14年(レ)31号仮執行の原状回復及び損害賠償請求事件は,平成14年3月18日の被控訴人による請求の放棄により終了した。2 控訴人の平成14年4月5日付書面による口頭弁論期日指定申立て以後の訴訟費用は,控訴人の負担とする。
事実及び理由
第1 請求
神戸簡易裁判所平成12年(ハ)第3179号貸金請求事件について,同裁判所が平成13年3月16日に言い渡した下記の原判決が取り消され,被控訴人の請求が棄却されたときは,被控訴人は,控訴人に対し,34万7819円及びこれに対する平成13年9月4日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。記
1 被告は,原告に対し,19万6335円及びこれに対する平成12年7月27日から支払済みまで年26.28パーセントの割合による金員及び5万8043円を支払え。
2 訴訟費用は被告の負担とする。
3 この判決は仮に執行することができる。
第2 事案の概要
本件は,上記原判決を受けた控訴人が,控訴を提起するとともに,仮執行宣言付原判決に基づき,平成13年9月3日,被控訴人に対し29万7819円を支払ったとして,原判決が取り消され,被控訴人の請求が棄却される場合には,民事訴訟法260条2項に基づき,仮執行の原状回復及び損害賠償請求として上記既払金の返還及び仮執行によって被った精神的損害として5万円を被控訴人に対して請求した事案である。1 争いのない事実等
以下の事実は争いがないか,当裁判所に顕著な事実である。
(1) 神戸簡易裁判所平成12年(ハ)第3179号貸金請求事件について,同裁判所は,下記のとおり平成13年3月16日に判決を言い渡した。
ア 被告は,原告に対し,19万6335円及びこれに対する平成12年7月27日から支払済みまで年26.28パーセントの割合による金員及び5万8043円を支払え。
イ 訴訟費用は被告の負担とする。
ウ この判決は仮に執行することができる。
(2) 控訴人は,同年3月29日,神戸簡易裁判所に控訴状を提出して控訴提起した(当庁平成13年(レ)36号貸金請求控訴事件(以下,「本案事件」という。)。
(3) 控訴人は,本案請求にかかる借金返済の貸金債権について,平成13年9月3日,被控訴人に対し,29万7819円を支払い,被控訴人は,控訴人に対し,その残債務を免除するとの意思表示をした。
(4) 控訴人は,平成14年1月28日の本案事件第1回口頭弁論期日において,平成13年11月14日付控訴理由書を陳述し,上記(3)の支払いにつき,民事訴訟法260条2項に基づき,仮執行の原状回復請求を申し立てる旨述べ,平成14年3月18日に同日付本件申立書を提出した。
被控訴人は,同日の本案事件第2回口頭弁論において,本訴請求を放棄すると陳述した。
(5) 控訴人は,同年4月5日付期日指定の申立書を当裁判所に提出し,本件について,期日指定の申立てを行った。
2 争点
本件が,本案事件における被控訴人の請求放棄により終了しているか。
3 争点に対する当事者の主張
(控訴人)
(1) 仮執行の原状回復及び損害賠償請求の申立て(以下,「原状回復等の申立て」という。)は,一種の訴訟係属中における訴え提起であり,反訴に類するものであるが,反訴と異なり控訴審においても相手方の同意を要しないものである。
そして,被控訴人は,擬制陳述された平成14年1月22日付答弁書においてこれに対して弁論をしているから,本件は反訴に類する請求として攻撃防御の対象となっており,控訴人が取り下げない限り終了せず,裁判所はこれに対して判断するべきである。
(2) 被控訴人が行った請求放棄の陳述は,控訴人の本件原状回復等の申立てを阻止すべく行われたもので,時機に遅れたものであり却下されるべきであるから,裁判所は本案判決をすべきである。
(被控訴人)
被控訴人は,控訴人から本件貸金の弁済として29万7819円の支払いを受け,残額を免除したことを受けて本案事件第2回口頭弁論期日において本訴請求を放棄したものであり,控訴人はこのような経過を認識しているのであるから,上記請求放棄が時機に遅れてなされたものとする控訴人の主張は失当である。
第3 当裁判所の判断
1 民事訴訟法(以下,「法」という。)260条2項は,本案判決を変更する場合には,裁判所は,被告の申立てにより,その判決において,仮執行の宣言に基づき被告が給付したものの返還及び仮執行により又はこれを免れるために被告が受けた損害の賠償を原告に命じなければならないと規定しており,同条2項により原状回復及び損害賠償を命ずる裁判をなすには,本案判決を変更する判決の言渡しがなされることが前提となっており,その意味で,原状回復等の申立ては本案事件に付随するものであると解される。しかるに,本件において,本案事件は,前記争いのない事実等(4)記載のとおり,被控訴人により請求放棄がなされたことにより終了しているのであるから,当裁判所は本訴請求の当否を判断して本案判決を変更する判決の言渡しをすることができない。
したがって,法260条2項により本案事件に付随して申し立てられた本件原状回復等の申立ても,上記請求放棄によって終了したと解すべきである。
2 控訴人は,原状回復等の申立ては,反訴に類する一種の訴訟係属中における訴え提起であり,被控訴人もこれに対する弁論をしているのであるから,本案事件とは独立の攻撃防御の対象として,控訴人がこれを取り下げない限り終了しないと主張する。
控訴人の上記主張は,原状回復等の申立てが反訴に類するものであることを前提に,控訴審における反訴の提起に関する擬制同意の規定(法300条2項)と同趣旨のものをいうと解されるが,前記1に認定説示した原状回復等の申立ての本来的性格に照らせば,仮に被控訴人が異議を述べないで同申立てに対する弁論を一旦なしたとしても,その後本案事件が終了した場合にまで,本案事件の訴訟手続から離れて裁判所が同申立ての当否を判断しなければならないと解するのは困難であるのみならず,仮にこの点をさて措くとしても,被控訴人の前記答弁書は,被控訴人による請求放棄以前の,本案事件の係属中である本案事件第1回口頭弁論期日において(擬制)陳述されたものであり,同答弁書中の原状回復等の申立てに対する答弁部分(4頁第3項)も,あくまで本案事件に付随するものとしての原状回復等の申立てに対してなされたものにすぎないのであるから,これをもって,原状回復等の申立てに異議を述べることなく弁論をしたとは認められないというべきである。
したがって,控訴人の上記主張は理由がない(なお,このように解しても,控訴人は,原状回復等の申立てと同内容の請求を別訴の提起によりなしうるのであるから,特段控訴人に不利益を与えるものではない。)。
3 また,控訴人は,控訴人の請求放棄は控訴人の原状回復等の申立てを阻止すべく行われたものであり,時機に遅れたものとして却下されるべきであると主張するが,被控訴人の請求放棄により本案事件の完結を遅延させることになるとは認められないから,少なくともこの点において控訴人の上記主張は失当たるを免れない。
4 結論
以上のとおり,控訴人の期日指定の申立ては理由がないから,本件仮執行の原状回復及び損害賠償請求の申立ては,本案事件における請求放棄によって終了したとの判決をすることとし,控訴人の平成14年4月5日付書面による口頭弁論期日指定申立て以後の訴訟費用につき,民事訴訟法67条1項,61条を適用して,主文のとおり判決する。
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